光のもとでⅠ

「ほかにじーさんとか静さん、紅子さんや斎さん、そこら辺のあれこれ話し始めるなら、俺、真面目に帰るけど」
 兄さんを睨むと、
「わかったわかった、お疲れさん」
 兄さんは苦笑しながらもともと読んでいた本に視線を移す。
「……兄さん」
「何? 訊きたくなった?」
「ならないし……。俺が訊きたいのは違うこと」
「何?」
「……翠の記憶が戻る可能性ってどのくらい?」
「……何かあったか?」
「すごく些細な記憶を思い出しているみたいだった」