光のもとでⅠ

 緊張もなく、ただ奏者と楽しそうに歌う娘が新鮮でならなかった。
 歌い終わったあと、
「こんな翠葉が見られるとは思わなかったわ」
 と、碧が目尻に涙を滲ませたほど。
 俺はそんな奥さんの手を握りしめる。
 翠葉は自分が歌う最後の歌で涙を零した。
 その涙の理由はわからない。
 あと少しでライブが終わってしまうことが悲しいのか、歌の内容に纏わるものなのか――。
 一瞬、形のない不安が心をよぎったものの、すぐにそれは払拭される。