「おや、一通もなしですか。さっすが周防ちゃん」
 俺はポスンと音を立て、ソファに身体を預けた。
「やっぱ、この仕事が終わってもまた一緒に仕事したいなぁ……」
 でも、今回のように長く家を空けるのはもうやめたい。
 ま、「仕事」という形に拘る必要もないか……。
 今の仕事が終わったら、部下ではなく友達になってください、と言ってみよう。
「父さん、俺そろそろ行くけど」
 気づけば時計は八時を差していた。
「唯は?」
「蔵元さんから電話があって出ていった。たぶん秋斗先輩のところじゃないかな?」
「ふーん……ま、蒼樹も気をつけて行っておいで。俺は碧の支度が済んだら出るよ」