「翠葉がステージで歌を歌うとはねぇ……」
「感慨深いものがあるわね」
 そんな会話をしたのはいつだったか……。
 確か、夏休み明けの早い時期だったと思う。
 まさか、蒼樹たちが藤宮の生徒になるとは思っていなかったし、あの娘が「姫」に選ばれるとは思っていなかった。
 さらには、「藤宮」の人間に好かれることになろうなんざ誰が予想したことか――。

 藤宮の学園祭こと紅葉祭当日は、静からの誕生日プレゼントというありがたいお言葉で丸一日休めることになっていた。
 真夜中に帰ってきて、朝には家族で朝食を摂り娘を送り出す。