そんな気はしたけど父さんもお待ちかねなわけで、このあと時間が無限にあるわけでもない。
 だから、翠葉をバスルームへ追いやり、唯はキッチンへ連行した。
「まさか唯から何か訊いたりしてないよな?」
「うん? とりあえず部屋で秋斗さんのジャケットに顔うずめて匂いクンクンしてたから『変態』って言っといた。それだけだよ」
「それだけって、おまえ……」
「だって、声でもかけなかったらもうしばらく動きそうになかったし?」
 俺は「変態」という言葉に何を言う気力も失う。