「じゃぁさ、この携帯からかけるといいよ」
 俺は得意げに自分の携帯をリィに押し付けた。
「ほら、それ司っちのだからさ、それから発信すると司っちの通話料になっちゃうじゃん?」
 もっともらしい理由というより、かなり適当な理由を口にしたわけだけど、素直なリィは「そっか」って顔で納得してしまった。
 そんなところもかわいいよね。
「早く電話して安心させてあげなよ!」
「うん……」
 リィの番号はリダイヤルに入っているけど、そんなことも思いつかなかったのか、リィはひとつひとつ自分の番号を押し始めた。
 暗い車内に携帯の明かりだけが煌々と光る。
 番号はすでに押し終わっているはずなのに、いつまでたっても通話ボタンを押そうとしない。