それでも、防御ソフトの改良をしながらパソコンディスプレイに小さくステージの映像を表示させていたことを俺たちは知っている。
「俺、これに専念するから何か問題があれば声かけて」
 秋斗さんは蔵元さんにそう言ってインカムを外し、代わりのイヤホンを耳に装着した。
「これ」ってさ、普通に考えたら「ソフトの改良に集中する」のはずだけど、絶対に違うと思う。
 ただ、リィの歌を聞きたいから外した、の間違いだよね。
 俺は身の安全と給料の安全を考慮して、心の中で突っ込むのみに留めた。
 でも、秋斗さんだけではなく、俺もあんちゃんもみんながパソコンのディスプレイにコンサートの中継を映していた。
 それも一種仕事。
 ほら、司っちと海斗っち、それからリィの警護も兼ねているから。