怒気をはらんだ声はその場の空気を凍結させる。
「あ~……えっと、司、そろそろスタンバイに入ろうか?」
 これ以上人目を引いても仕方ない。
 会長の言葉に抗いはしなかったが、翠の行動や言葉に納得しているわけではなかった。
 最後に視線を合わせると、翠はひどく怯えた目をした。
 なんで――なんで俺がそんな目で見られなくちゃいけない?
 前を歩く会長は首を傾げ、
「なんであそこで言い合いになっちゃうのかなぁ? せっかく苦労して準備したのに、気分的には台無し?」
「隠し撮りしておいてよくそんなことが言えますね」
「うーわっ……司ってばダークまっしぐらっ!?」
 中央昇降機の脇に置いてあるマイクスタンドに手を伸ばしたとき、視界の端に翠の姿を捉えた。