後日知ったこと。
 俺がこんなにも悩んだ末に話したというのに、司ときたら――。
「知ってる。俺、その場にいたから」
「はぁっ!?」
「……そんなに驚くことでもないだろ?」
 書類を片付けながら淡々と口にする。
「で、おまえどーすんだよ」
 その言葉にすら動作を止めず、
「どうもしないけど?」
 と、答えた。
「司だって翠葉のこと好きだろっ!?」
「好きだけどそれが何か?」
 わけわかんね……。
 司が書類をまとめひとつため息をつくと、ようやく俺の顔を見た。
「今俺が好きだと言っても困らせるだけだろ? なら、今はポジションキープしておくほうが無難」
 そう言うと、今までまとめていた書類をファイリングしだす。
「それでいいのかよ……。妬いたりしねーの?」
 当然すぎる疑問をぶつけた。
 だって、相手はあの秋兄なわけで、自分の兄を悪く言うつもりはないが、手は早いほうだと思う。