「音源が提出された履歴は?」
「それもないんだよね」
「何暢気にかまえてる? おまえの頭は飾り物か?」
 翠に対する苛立ちとは全く別の種類の苛立ちを感じていた。
 それは間違いなく、音源が提出されていないということだろう。
 これだけ綿密に確認を重ねてきている中、チェックにミスがあるとは思えない。
 それにしても、いくらなんでも提出が遅すぎる。
 俺が動こうとしたとき、漣に止められた。
「それ、俺が回収してきます」
 漣は俺の返事も聞かずにふたりのもとへ向かい、真っ直ぐ茜先輩を目指した。
 ……あれも一枚噛んでいるのか?