もっと言いようがあっただろう。
 けど、ささくれ立った俺の心はその手間の一切を省く。
 挙句、翠から謝罪の言葉を告げられた。
 何をやっているんだ、とは思うのに、さらに俺は畳み掛ける。
「謝るくらいならいい加減行動を改めろとは思う。でも、別に迷惑だとは思ってないから」
 末尾に「迷惑じゃない」と補足できたのは悪あがきの結果。

 茜先輩がステージへ上がると実行委員が戻ってきた。
 翠の目は確かに少し赤く充血していたが、俺が泣かせたわけじゃない……と思いたい。
 だが、この実行委員には俺がいじめたように見えたらしく、やけに攻撃的な視線を向けられた。
 そういえば、さっき「失格」と俺に連呼したのはこの女だったか……。