光のもとでⅠ

 はっと我に返り、「なんでもない」と補足する。
「……ツカサらしくないね?」
「翠こそ……」
「私は――私はただ、この歌のとおりならいいのに、ってそう思っただけ。理想だな、って……。ただ、それだけだよ」
「あぁ、そう。じゃ、次もがんばって」
 俺はそんな言葉しか口にできず、ステージ中央に翠を残し、ひとり左昇降機から奈落へ降りた。
 なんとなく得た確信……。
 翠には好きな男がいるのかもしれない。
 そうじゃなかったら、あんな言葉は出てこないだろう。
 もう遅いのか……? 今からでは遅いのか?