光のもとでⅠ

 茜先輩が離れたことを確認してから「大丈夫か?」と声をかける。
 本当は、自分に「大丈夫か?」と言いたかった。
 けど、そんなことをしたところで「大丈夫」にはなり得ない。
 だから、翠の目に映る自分を見ることで落ち着こうとした。
 今、翠の目の前にいるのは自分で、俺以外の男は映っていない。
 そんなことで自分をごまかそうとしていただなんて、今思えば安易な考えにもほどがある。
「……大丈夫じゃないけど、大丈夫なふりをさせてほしい」
 俺は嘘を含まない答えに安堵した。
「……なら、笑え」
 ほかの男を想って歌ったなんて、俺が錯覚しなくて済むように。
 今すぐ笑え――。