光のもとでⅠ

「感情移入しちゃった?」
 翠の身体がピタリと止まる。
「感情……移入?」
「あれ? 違った? なんだか、歌を聴いていてそんな気がしたの。翠葉ちゃん、誰か特定の人に側にいてほしいのかな、って」
 誰か、特定の、人……?
 そんな人間が翠に?
 ……秋兄か? それとも違う誰か……?
「さ、涙拭いてステージに上がろう?」
 一度はおさまったはずの黒い感情が再度心に湧き返す。
 間違いなく、扱いに困る類の「嫉妬」という感情――。