「うちのメインコンピューターの門番は、データの吸出しを許すような甘い人間ではありません。こういった件において、唯の敏捷性は群を抜くものがあります」
「なるほど……。進入された時点で気づけたわけですね」
「はい。こちらのアクセスを遮断される前に手を打っております。情報の吸出しはおろか、改ざんする間も中を盗み見る時間もなかったでしょう。今はクラッカーになり損ねたハッカーを追い詰め中です。秋斗様はその傍らで新しい防御ソフトの開発をしていらっしゃいます」
「……秋兄に、残務処理が嵩むようなら声をかけるように伝えてください」
「かしこまりました」
 メインコンピューターの中には翠の情報も入っている。
 それが漏れたら間違いなく命に関わる危険に晒される。
 そうならずに済んで良かった……。