光のもとでⅠ

 奈落へ戻ると、そこに翠の姿はなかった。
「高崎、翠は?」
「俺も詳しくは知らないんですけど、七倉が朝陽先輩と一緒に会場へ行ったって言ってました」
 会場に……?
「藤宮、悪いんだけどこれの確認お願い」
 俺は実行委員長に呼ばれ進行表に目を通す。
「お姫さん、さっき吹奏楽部の顧問から連絡あって会場に呼ばれたんだよ。なんかハープの弦が切れたって言ってたと思う」
 俺が何を訊くでもなく情報をくれるのは、ほかの人間には俺が翠を好きだということが周知されたと取っていいだろう。
「そうですか……。これ、このままで問題ありません。確認印だけ押しておきました」
 俺は翠が戻ってくるであろう場所へ移動する。