「彼女、いい顔して歌ってるじゃん」
「あぁ……」
「姫と王子の出し物として推しておいてなんだけど、彼女がひとりでステージに立てるとは思ってなかった」
 それはわからなくもない。
「で、どうしようか……。残念ながら、司が翠葉ちゃんに向けて歌っている事実に彼女全く気づく気配がないんだけど」
 ばかばかしい……。
「最初に言ったはずだ。歌や視線を合わせるくらいで気づくような人間じゃないと」
「へぇ……。じゃ、次はカメラ目線とか挑戦してみたら?」
 屈託のない笑顔で邪気だらけの言葉を吐く。