光のもとでⅠ

 しかし、久しぶりの全力疾走で身体はすっきりした気がした。
 俺は翠に声をかける前に飲み物を取りに行く。
 あの状態では高崎も七倉も飲み物までは頭が回らないだろう。
「何になさいますか?」
「翠のだから常温のもので」
「かしこまりました」
 丁寧な口調だが、明らかに笑いを含む。
 警備員の名前は藤守武明(ふじもりたけあき)
 秋兄よりひとつ年下の警備員は若手の中でも将来有望と言われている人物だ。
「何か楽しいことでも?」
「えぇ、司様のこんなお姿を拝見できるとは夢にも思いませんでした」
 人の良さそうな顔が控え目に笑った。