「で? なんでそんな悩ましい顔してるんだよ」
「……昨日から、秋斗先輩と翠葉付き合い始めたんだ」
「はぁっ!? 年の差いくつだよっ。おまえ、よく許したなっ!?」
 環が言うこともわからなくはない。
 年の差は俺以上に離れているわけだから……。
 さらに環と先輩は生徒会を通して付き合いがある。
 その間に秋斗先輩の人となりは十分すぎるほどに理解しているだろう。
「おまえの妹が秋斗先輩に入れあげるのはわからなくもないけど、あの先輩がプライベートで人に関与するなんてまずないだろ?」
 そう言われても仕方がない。
 秋斗先輩は高校のときも大学のときも、それほど人と親しく付き合うことはなかったのだから。生徒会のメンバーに対してだってどこか一線を引いて接していた。だからこそ、「おまえの妹が入れあげるのはわかるけど」という言葉が出てくる。
「環……それ、若干逆なんだよね」
「何が? どこが逆?」
「……つまり、入れあげてるのは翠葉じゃなくて先輩のほうって意味」
 確かに翠葉だって先輩のことは好きだろう。でも、想いに重さがあるとしたら、先輩のほうに秤は傾くと思う。
「それ冗談?」
「いや、冗談じゃなくて……。先輩、本気みたいでさ。だから俺も牽制するのはやめたんだけど」
「……そら人様の妹ながらに俺が心配になってきた」
 それはありがたいようなありがたなくないような……。