光のもとでⅠ

 音が硬いか柔らかいか、角があるのか丸いのか。
 翠の奏でる音は流曲線のように柔らかな音をしていた。
 その音にボンゴとフルートの音がよく馴染む。
 四方に設置されているモニターのひとつを意識しながら歌っていた。
 視界の隅に、俺と翠が映し出されているのを確認しながら。
 モニターのせいなのか、翠の表情が薄ぼんやりと曇って見えた。
 それに気づくと同時、少しずつではあるが、翠の演奏がモニター音から逸脱し始める。
 背を向けたまま軽く肘でつつくと、その数秒後には不自然さを感じない速度でもとのテンポに戻った。
 ……いったい何を考えて弾いていたんだか。
 胸を撫で下ろしたい心境に駆られつつ、何気なくモニターに視線を移すと、今度はとても穏やかな表情で演奏する翠が映っていた。