吹奏楽部の準備が整いステージへ上がると、翠は俺を見向きもせずにピアノのもとへと移動する。
俺はそのあとについていき、足元にある遠赤外線ヒーターのスイッチを入れた。
電源さえ確保できれば灯油もガスもいらず、場所を取らず音も鳴らないこのヒーターは使い勝手がいい。
楽譜をセットし終わり、椅子に腰掛けた翠が不思議そうな顔をしてピアノの下を覗く。
素足でペダルを踏んだにも関わらず、金属独特の冷たさを感じなかったためだろう。
このまま放っておいたら翠の観察タイムが始まってしまう。
だから声をかけた。
「遠赤外線ヒーターを用意させた。寒いならもう一段階上げられるけど?」
「ううん、大丈夫」
大丈夫、と言うその口が、不自然に開いたまま俺に向けられていた。
俺はそのあとについていき、足元にある遠赤外線ヒーターのスイッチを入れた。
電源さえ確保できれば灯油もガスもいらず、場所を取らず音も鳴らないこのヒーターは使い勝手がいい。
楽譜をセットし終わり、椅子に腰掛けた翠が不思議そうな顔をしてピアノの下を覗く。
素足でペダルを踏んだにも関わらず、金属独特の冷たさを感じなかったためだろう。
このまま放っておいたら翠の観察タイムが始まってしまう。
だから声をかけた。
「遠赤外線ヒーターを用意させた。寒いならもう一段階上げられるけど?」
「ううん、大丈夫」
大丈夫、と言うその口が、不自然に開いたまま俺に向けられていた。


