光のもとでⅠ

 それを素直に表現できない自分は、やっぱり俺でしかないわけだけど……。
「ほら」と左手を差し出せば、その手に翠の手が重なる。
 翠の手にスポットライトが直接当たり、一瞬だけ光って見えた。
 そして、俺が握る前にしっかりと握られる。
「っ……」
 今ほど自分が先を歩いている状況をありがたく思ったことはないだろう。
 自分が今、どんな顔をしているのかすら想像できない。
 ただ、翠に見られたくないことだけは確かだった。
 翠のこういう行動全部が無自覚なところが本当に信じられない。
 自分の感情をコントロールするために五感をフルに使う。
 一番最初に脳に到達したのは翠の手の冷たさだった。