そこに人が向かっている、とそれだけが伝わればいい。
 通信を再開させインカムから戻るよう催促することもできたが、そんなふうに話を中断させたくはなかった。
 いや、ただ単に俺が迎えに行きたかっただけなのかもしれない。
 早く翠の状態を――顔を見たくて。
 離れている間、何度も携帯を見た。
 数値に異常が出ないかどうか。
 時折脈が速くなるものの、体温が少し下がる程度で際立った数値異常は見られず今に至る。
 数メートル先にふたりがいる。
 そう確信して声を発した。