翠が第四通路に消えてから三十分が経とうとしていた。
「朝陽、放送委員に通達。軽音部が終わったらしばらく引き伸ばすように」
「了解。あと、頃合見て翠葉ちゃんのお兄さんに連絡入れるわ。通信の再開してもらうように。司は行くんだろ? 迎えに」
 何も答えない俺に、朝陽独特の柔和な笑みを向けられた。
「ほら、王子様なんだから、さっさとお姫様ふたり迎えに行ってこいよ。周りが気づいて騒がしくなる前に。さっきから茜先輩の付き人が走り回ってる」
 そう言うと、朝陽は放送委員に指示を出し始めた。
 俺は真っ直ぐ第四通へ向かい、その先を目指す。
 前方に人の気配を感じ、わざと足音を立てた。