至近距離、って言葉に反応したかな?
「入院していたとき、消毒薬の匂いが嫌で……。看護師さんがくれた香水を愛用してるんです。エラミカオのユージンゴールド――」
「あの香り、好き。フルーツとフローラルの香りがバランス良くて翠葉ちゃんに合ってるよ」
 なんて普通に答えているけど、その首筋に吸い付きたくて仕方がない。
 白く細い首筋もそそるけど、赤味を帯びるとそれが増す。
 しかし、彼女の顔を見れば頬を緩ませ少し落ち着いた感じだった。
 今仕掛けるわけにはいかないだろ……しっかりしろ、俺――。
「落ち着いたかな?」
 彼女は少しびっくりして俺を見上げると、はにかんだ表情で「はい」と答えた。
「不安なことはひとりで抱えなくていいから。話してくれさえすれば今みたいにすぐに解決してあげられることもある」
「でも、それは甘えすぎじゃないですか?」
「……あのさ、俺は甘えてほしいんだけど?」
「……でも、それは怖いです」
「どうして?」
「……だって、秋斗さんがいなくなって自分ひとりで立てなくなったら困るもの……」
「どうして俺がいなくなることが前提かな……。そんなこと考えなくていいよ」
「それでも、不安なんです……」
 彼女は自信なさげに目を伏せた。
「大丈夫だよ。毎日だって好きだ会いしてるって伝える。毎日伝えても伝えきれいないくらいだ」