それは、俺が夏に渡したとんぼ玉。
 今日は見かけないと思っていたら、鎖骨と鎖骨の間にぶら下がっていた。
 それ、反則だろ。どう考えても反則。
 誰がなんと言おうと反則。
 そうは思いつつも、それを間近で見たいと思う自分もいて、用事を思い出したように近づいた。
「嵐が翠からコサージュ受け取れって言ってたけど、それ?」
「あ、うん。これ……」
 翠は手に持っていたコサージュをおずおずと差し出すものの、先ほどとは打って変わって俺を見ない。
「……なんで下向いたまま?」
「……それは訊かないでほしいかも?」