俺はスクエアステージ下のモニターで翠を見ていた。
 この歌は聞き覚えがある。
 球技大会のとき、翠が図書室で歌っていた曲だ。
 こんな歌詞だったのか、と思わず聞き入る。
 翠の声はうるさくなくていい……。
 今はその声に音程とリズムがつき、メロディとなって耳に優しく響く。
 選曲は佐野と海斗に一任されていたらしいが、さすがこのふたり、と言うべきか――翠のことをよくわかっている。
 そんな内容の歌詞だった。
「藤宮ー、上がる準備しろって」
「わかった」
 モニターの前から離れ昇降機に乗る。
 俺の頭は少し前から翠に占拠されていたと思う。