さっき冷蔵庫に入れたばかりのタルトとサンドイッチをトレイに載せ、電気ケトルを稼動させて寝室へ戻る。と、大泣きしている彼女がいた。
 慌てて駆け寄り、
「痛みっ!?」
「違っ……ごめんなさい、違うの――自分が……嫌――」
 自分が嫌って何……!?
 そんなに俺に触れられるのが、キスをされるのが嫌だったんだろうか――。
 突如俺の携帯が鳴り出した。
 こんなときに誰だ……。
 ディスプレイを見れば湊ちゃんからだった。
「はい」
『翠葉は?』
「今は俺の寝室」
『何かあった?』
「ちょっと情緒不安定っぽい」
『脈が乱れたけど大丈夫なのね?』
「うん、大丈夫。何かあれば連絡する」
 そう言うと通話を切ってベッドの上に携帯を放った。
「ちょっと待っててね」
 持ってきたトレイを持ってキッチンへ戻ると、トレイはそのまま冷蔵庫へ入れ、代わりにミネラルウォーターを取り出しストローを挿す。
 いったい何が原因であんなに泣いてる?
 ミネラルウォーターを持って戻ると、さっきと同じようにベッドへ腰掛けた。
「少しこれを飲んで落ち着こう」
 ペットボトルを顔の近くに差し出すと、彼女は両手で持って小さく喉を上下させた。
「……キスが嫌だった? それとも、触れられるのが嫌だった?」
 訊くのは怖かった。でも、訊かないことには始まらない。
「……違うんです……ドキドキしちゃうから――」
 言って、また涙を一筋零す。
「でも、それって恋の醍醐味だと思うんだけど」
「……だって、みんなに知られてしまうのはすごく恥かしい――」
「――バングルか」
 そういうことか……。