くすぐったそうに片目を細める彼女を、欲望の眼差しで見ていた。
 その手を先ほどと同じように首筋に這わせると、彼女は小さく身震いをした。
「嫌?」
「くすぐったいです……」
「今はね」
 しだいに気持ちよくなるよ。しだいにね……。
 我慢できなくなったのか、彼女の手が俺の手を制した。
「そうやって止めてくれたらやめるよ。……君が自分から俺に触れてくれたのは三回目かな」
「え……?」
「熱を出している俺の額に触れてくれたときと藤山。そして今。その三回だけだ。あぁ、エスコートはカウントに入れてないよ。あれは俺が先に手を差し出してるからね」
 それから、男性恐怖症になっていたときの図書棟でのあれはカウントには入らないだろう。
「好きな子に触れることができるのはすごく嬉しいし、逆に触れてもらえることだって嬉しい。俺はまだ三回しか触れてもらってないけどね。……少しずつ知って?」
 俺が教えるから……。一からすべてを――。
 彼女は誘導されるかのように、「はい」と答えた。
「ありがとう」
 と、立ち上がり様にキスをする。
「お昼にしよう。苺タルトを買ってきたから待ってて」
 目の縁に残る彼女の涙を親指で拭ってから寝室を出た。