『藤宮秋斗くん、至急、保健室まで来るように』
 俺を呼び出した教師は保健室の住民、養護員教諭だった。
 普段の生活で接点がある人間ではない。
「秋斗先輩が呼び出されるなんて珍しいですね? 何かやらかしました?」
 後輩の蒼樹に突っ込まれつつ、手にしていた会計に関するプリントを取られた。
「何かな? とくに呼び出されるような所業をした記憶はないんだけど」
 それまでは俺を呼び出す教師などいなかった。
 たいていは、呼びつけるのではなく用件を言いに教師自ら出向いてくる。
「あとはやっておきますから。明日の朝にでも確認してください」
 そう言われ、俺は図書室を出て保健室へ向かった。
 そのときはそんなに時間がかかるとは思っていなかった。