「司くん、彼、変わったわね。今も変わらずかわいげないけど、昔よりはまし。あんなところに立って、歌を歌っちゃうくらいにはね」
「そうですね……」
 司が変わったのは、間違いなく翠葉ちゃんと出逢ったからだろう。
 もう一度彼女に視線を戻すと、彼女は司に釘付けになっていた。
 なっちゃん先生もそのことに気づいたらしい。
「あら、これは堪える?」
「堪える、というよりは、想定の範囲内、ですかね」
 彼女が司に惹かれるのは何度目だろう。
 俺がそんな彼女を目の当たりにするのは、これで何度目になるだろうか。
「なんか……本当にらしくないわよ? 余裕綽々のふてぶてしさが足りない気がするわ。どうしちゃったの?」
 心配そうに顔を覗き込まれた。
 この人になら話せるだろうか。