「もう怒ってないよ。これだけキスさせてくれればね」
 彼女は少し困惑した顔をしていた。
 隙あらばまたキスをしたくて押さえた手首はそのままにしていた。が、彼女の目から無数の涙が零れだす。
 彼女の涙を口で吸い取りながら、
「ごめんね……。俺、結構独占欲が強いみたいだ。でも、嫌だったら全力で拒否して? そしたらやめるから」
 卑怯かもしれない。でも、君は俺を好きだと言ったよね?
「……何を?」
「……キスも、それ以上のことも」
「っ!? だってこの間――」
「それ、取り消させてもらえる?」
「っ!?」
「そんなに怯えないで? あくまでも、翠葉ちゃんが嫌がるならしない。それだけは約束するから」
「…………なんて答えたらいいのかわからないです」
 押さえていた手を放し、左手を彼女の額に伸ばす。
 生え際の髪の毛を何度も掬っては額へと戻り、同じ動作を繰り返す。
 男に二言はないとか言うけど、やっぱり我慢ができそうにない。
 今すぐにでも彼女のすべてが欲しい。