好きな子の声が歌声となって耳に届く。
 それはなんだかとても不思議な感じだった。
 マイクを通した声は初めて聞くな……。
 そんなことを考えているうちに、まるで現実世界ではないところを浮遊しているような感覚に陥る。
 けれども、そんな時間は永遠には続かず、あっという間に終わってしまうんだ。
「あーぁ、終わっちゃった。あの子の声、初めて聞いたわ。きれいなのは容姿だけじゃないのね?」
 なっちゃん先生は名残惜しそうに感想を述べる。
 隣のステージでは司たちの準備が整い演奏が始まる。
 その司を見て、また口を開く。