噂が噂を呼び、ほかの私立校からも講演依頼がくるほどの定評がある。
 そして、八年前と変わらずに、今もその美貌を維持していた。
 通常は特教棟三階の突き当たりに教室を構え、めったにそこからは出てこない。
 保健室からそこへ移動したのは二年前。
 湊ちゃんが校医としてこの高等部に着任してからだ。
「そうね。たまには下界の空気でも吸おうかと思って」
 そう言う割には今だってずいぶんと高い位置にいる。
 絡めた腕をするりと解き、なっちゃん先生は俺の隣に並んだ。
 手すりを目前に、「この柵高いわね」と文句を言う。
「そりゃ、人が誤って落ちないように設置された柵ですから、このくらいの高さがないと意味がないでしょう」