「さすがに衣装のことまでは聞いてなかった……」
「蒼兄……うちのカフェ、ケーキは美味しいの。でもね、この衣装にだけは慣れそうにないよ」
 翠葉の苦笑に安堵したのなんて初めてのことだった。
「……慣れなくていいよ。俺は今すぐにでも翠葉にジャージをはかせたい」
 そう言った直後、翠葉の後方から視線を感じた。
 そちらに視線を移すと、翠葉と同じ格好をした桃華がこちらを見ていた。
 彼女はクスリと笑う。
 声を発さない唇が紡いだ言葉は、「心配症」の一言だった――。