紅葉祭中、大学の駐車場の半分が高等部の保護者用枠となるため、今日は徒歩。
 俺は八時半のスタートに間に合うように家を出た。 
 父さんたちは関所が空いた頃を見計らって来ると言っていた。
 自分は藤宮学園関係者用のテントで学生証を提示し、ボディーセンサーゲートを通るだけでパスできる。
 生徒の家族と思われる来場客を横目に、緩やかな坂を高等部門へ向けて歩みを進めると、校門の前にはすでに長い列ができていた。
 時間になると門はすぐに開門され、列が動き始めた。
 門の両脇に並ぶ実行委員から冊子を受け取った直後に携帯が鳴る。
「唯……?」
『あんちゃん、今どこ?』