「唯、でいいか?」
「OKです。司っちにもそう呼んでもらってるんで」
「わかった」
「ところで、司っちは言えたんでしょうかね?」
「大丈夫だろ」
 そうであってもらわなくては困る――というのは、自分の失態を棚に上げて、ということになるのだろうか。
「ま、司っちだしね。大丈夫か」
 そんな会話をすれば、幼稚部初等部門入り口が見えてくる。
 今日、車で来場する人間は、ここか中等部門入り口からの入場となる。
「これが学園祭の規模かって訊きたいよ……。うちの高校もそれなりの私立だったけど、こんなじゃなかったですよ」
 若――唯は呆れてシートにふんぞり返る。