「別に珍しいことでもないだろ? 好きな子が愛飲しているものを飲みたいと思うのなんて」
「……ふーん、相変わらず、そういうことサラッと言うよね?」
「それが何? もともと俺はこういう人間だけど」
「……蔵元さん、秋兄はどうして機嫌が悪いんだろう」
「あぁ、ではカルシウムでも補っていただきましょうか」
 蔵元がコトリ、とテーブルに置いたのはカモミールミルクだった。
 カモミールミルクは、彼女がとても好きな飲み物のひとつで、ほんのりと黄色く色づくミルク色に心が和む。
「なんかよくわかんねーけど、俺、もう行くから!」
「気をつけろよ」
「……わかってるって。翠葉のことも任せとけ!」
 一瞬の間はあったものの、海斗は勢いよく席を立ち飛び出していった。