食事が終わる頃、秋兄はすごく嬉しそうな顔をしてリビングへ戻ってきた。
 こんなの話を聞くまでもない。うまくいって付き合うことになったか何かだろう。
 誰もが秋兄の顔を見て察したと思う。
 栞さんが秋兄のシチューをあたためなおしに行くと、
「どうでした?」
 御園生さんが訊いた。
「無事、彼氏に昇格」
 姉さんの視線が自分に張り付いていて痛い。
 そういう目で見るな。
 正直面白くはない。でも、それで翠があんな顔をしないで済むなら今はそれでいい。
 今、翠の気持ちは秋兄にある。そんなの、誰が見たって歴然としていて、それを捻じ曲げるようなことだけはしたくない。
 俺は……翠がひとりで泣くようなことがなければそれでいい。願わくば、笑っていてくれたらそれでいい。
 今は、それでいい。
 俺がいるからか、秋兄もそれ以上のことは口にしないし、誰もがそれ以上を訊こうとはしなかった。
 居心地の悪さに席を立つ。
「翠のところに行ってくる」
 四人の視線が俺に集る。
 だから……そういう目で見るなよ。
 俺、別にかわいそうじゃないし、今想いを告げるほどバカでもない。