光のもとでⅠ

「うん、嬉しい」
「紅葉祭だから?」
「それもあるけど、ちょっと違う」
 翠葉は少し恥ずかしそうに笑った。
「あのね、歩く速度で景色を見られるのが好き。風やその季節の温度を肌で感じながら歩くのが好き。好きなものが身の回りにあふれていると幸せだよね?」
 そういえば……最近は学校の行き帰りも、この近距離ですら翠葉は送り迎えつきだったっけ。
 もしかしたら、こうやって外を歩くのは久振りなのかもしれない。
 翠葉は何もない宙に向かって手を伸ばす。
 手を伸ばしたところで何があるわけではない。