顔以前に表情の問題だと思う、という俺の心の声は届かない。
 一階に着くまで終始無言。
 まぁ、何って午後のイベントがやなんだろうなぁ……。
 ほとんどの生徒はステージに立つ人間も観覧する人間もライブステージを楽しみにしている。
 きっと嫌がってるのは司くらいなものだろう。
 エレベーターを降りると、左の通路から翠葉が歩いてくるのが見えた。
「翠葉、はよっす!」
「海斗くん、おはよう」
 司とは違い、翠葉は穏やかな表情をしていた。
 それが結構意外っていうか、かなり意外。
 もっと緊張してカチコチしてるかと思っていたから。