マンションに着くと、崎本さんに出迎えられた。
「おかえりなさいませ」
「はい、ただいま」
 ツカサだけが言葉を返し、私はタイミングを失ってエントランスを通過してしまった。
 エレベーターに乗ると九階と十階のボタンを押し、スーッ、と静かに上昇を始める。
 九階に停まると、開いたドアを押さえた状態でツカサに携帯を催促された。
 ポケットから出した携帯を渡すと、
「三十七度七分……」
「明日明後日はゆっくり休むから大丈夫」
 そう言うと、つないでいた手にぎゅ、と力をこめられる。