まるで、さっきのやりとりなど何もなかったかのように。
あれは夢で、実は何もなかったのかな、と思い始める自分がいた。
そこに桃華さんがかばんをふたつ持って出てきた。
「はい、翠葉の分とあんたの」
桃華さんはふたつのかばんをツカサに押し付けた。
「どうしてツカサの分も……?」
「俺も帰るから」
「せっかく来たのに……?」
「来たくて来たわけじゃない。……とりあえず、選択肢はふたつ。御園生さんたちに連絡を入れて迎えに来てもらうか、俺と三百メートルの坂道を上るか」
私は何を考えるでもなく、「歩く」と答えていた。
あれは夢で、実は何もなかったのかな、と思い始める自分がいた。
そこに桃華さんがかばんをふたつ持って出てきた。
「はい、翠葉の分とあんたの」
桃華さんはふたつのかばんをツカサに押し付けた。
「どうしてツカサの分も……?」
「俺も帰るから」
「せっかく来たのに……?」
「来たくて来たわけじゃない。……とりあえず、選択肢はふたつ。御園生さんたちに連絡を入れて迎えに来てもらうか、俺と三百メートルの坂道を上るか」
私は何を考えるでもなく、「歩く」と答えていた。