「もーーーっっっ! こんなに練習して心こめて歌ってるのになんで百点が出ないのっ!?」
 理美ちゃんが悔しそうに地団太を踏むと、美乃里ちゃんが肩をトントンと叩いて宥めていた。
「じゃ、俺も歌おっかなー? 割り込みごめんっ! ってことで福山いっきまーす!」
「またそれかよー。千里が歌うの古い曲多すぎ」
「仕方ねーじゃん。母ちゃんがファンでガキの頃から歌わされてるんだから。でも、古くてもいい曲はいい! それに、俺が流行の曲を歌ったら、おまえら何も歌えなくなるよ?」
 サザナミくんが不敵に笑みを浮かべると、佐野くんが「一理ある」と口にした。
 どうやら、「カラオケ屋の息子」というだけのことはあるらしく、なんの曲でもそつなく歌えてしまうらしい。
 だから、みんなが集るときは古い曲をチョイスして歌うのだとか……。