私たちが校庭に下りたときには、とてもゆっくりなバラードが流れ始めた。
「ラスト二曲か……」
 ツカサがそう言った直後、
「一曲お相手願えますか?」
 急にかしこまった口調で尋ねられた。
 作られた笑みも所作もきれいすぎて息が止まりそう。
「翠、返事」
「あっ、わ、私、ダンスなんて踊れないっ。踊ったことないものっ」
 今話したとおり、私はダンスの授業だって受けてはいないし、ダンスを踊るようなパーティーにだって出たことはない。
 周りの人やツカサの立ち振る舞いを目にすれば一気に気後れしてしまう。