淀んだ空気が滞留していると、十分ほどで蒼樹が出てきた。
「あのー……申し訳ございません」
 と、頭を下げる。
「翠葉ちゃん、大丈夫?」
 栞ちゃんが声をかけると、
「はい、一応」
 と、蒼樹は俺の方を向いた。
「ことのあらまし聞きました。で、あれは翠葉が悪いな、と……」
 蒼樹は渋面を貼り付ける。
「いや……俺も大人げなかったと思う。もっとわかりやすく説明してあげられたらよかったんだけど、こんなこと説明したこと一度もなかったからさ」
「……一応、一年草と宿根草のたとえ話をしたら納得してました」
 その言葉に、その場の四人が「は?」と訊き返す。
 蒼樹は実に決まり悪そうに話し始めた。
「つまり、こういうことだったんです。先輩と翠葉は現時点で両思いなんですけど、あいつは自分の健康に自信がないから秋斗先輩には相応しくないと思っていて、秋斗先輩にはもっと元気ですてきな人が似合うと思ってるわけです。それを言われて秋斗先輩は落胆したんですよね?」
「……肯定」