リビングのソファに体をうずめるようにして座る。
「何があったのよ」
 呆れた顔をした湊ちゃんに訊かれた。
「いや、なんていうか……早い話、精神的に追い詰めちゃったかな」
 天井のシーリングファンを見ながら言うと、
「あんたらしくもない」
 と、それ以上のことは訊いてこなかった。
 代わりに栞ちゃんが、
「あの話の続きでどうしたらそうなるのよ。今頃ラブラブハッピーなはずだったのに」
 と、じとりと視線を向けてくる。
 けれども淹れたばかりのコーヒーを俺の前にも置いてくれた。
「ただね、秋斗。わかってはいると思うんだけど、翠葉に精神的なストレスは与えすぎちゃだめよ。不整脈が悪化する恐れがある。ほか、過度なストレスは自律神経にもいい影響を与えない。そのことだけは覚えておきなさい」
「俺もまだ青いよな……。蒼樹はどうやったらあの未知の生物と接することができるんだろう。真面目に疑問だよ」
 すると、「何それ」と司が口を開いた。
「思考回路が一般的じゃないっていうか、俺とは全然違うんだ」
「そんなの最初からわかってたことだろ?」
 そうか……司は翠葉ちゃんに初めて会ったときから、「わけのわからない生物」として認識していたんだったな。
 その点では俺より観察力があるのか、ものごとの本質を見る目を持っているのかもしれない。