「大丈夫よ、今は肺が過緊張の状態で、酸素を吸ってるように見えるけど、実際はあまり酸素が吸えてないの。血中酸素のバランスが戻れば治るわ」
 彼女はすごく苦しそうで、目からは大粒の涙が零れ落ちる。
 そんな状態が三十分ほど続くと、少しずつ落ち着き出した。
「そう、上手よ。ゆっくり大きく呼吸をしなさい。吸ったら最後まで吐き出すこと。聞こえてるなら頷きなさい」
 彼女は呼吸に全神経を注いでいた。
 最初こそ"奪われて"いたけれど、今は自分のコントロール下におけたよう。
 慎重に"吸って吐いて"の深呼吸を繰り返す。
 その間、湊ちゃんが固まってしまった彼女の手を念入りにほぐしていた。けれど、涙だけは止まらず……。
「なんで泣いてんのよ」と湊ちゃんが零す。
「……秋斗くん、私、こんな状態にしろとは言ってないんだけど」
 ここまで彼女を不安に追いやったのは自分だろう。それは確かだ。
「……何も言えないかな」
 彼女がいっぱいいっぱいになっているのは話していてわかっていた。それでも、彼女をフォローしてあげることはできなかった。
「それは秋斗くんに非があるってことかしら?」
「そう」
 そのとき――。