通話が終わってから発進した車は、いつもとは違う通用門から出てマンションへと向かった。
秋斗さんはマンションのロータリーに車を停めてくれ、借りていたジャケットを返そうとすると、
「冷えるから、家までちゃんと羽織ってて? 返すのはいつでもいいから」
その後も、「冷えるから」の一言で却下され、車を見送ることもさせてはもらえなかった。
エレベーターの中でポツリ、と零す。
「秋斗さんはすごく優しいね」
ふたりの兄は普通に答えてくれる。
「そうだな」と答えたのは蒼兄で、「わかりやすい優しさ?」と訊いてきたのは唯兄だった。
さっき、図書棟で零した言葉はしっかりと拾われていたらしい。
秋斗さんはマンションのロータリーに車を停めてくれ、借りていたジャケットを返そうとすると、
「冷えるから、家までちゃんと羽織ってて? 返すのはいつでもいいから」
その後も、「冷えるから」の一言で却下され、車を見送ることもさせてはもらえなかった。
エレベーターの中でポツリ、と零す。
「秋斗さんはすごく優しいね」
ふたりの兄は普通に答えてくれる。
「そうだな」と答えたのは蒼兄で、「わかりやすい優しさ?」と訊いてきたのは唯兄だった。
さっき、図書棟で零した言葉はしっかりと拾われていたらしい。


