たいそう機嫌の悪いそうなツカサが携帯の向こうにいる。
『今、翠の近くにいるんですよね? なら、この携帯にかけてくる必要はないかと思いますが』
 その言葉を聞いてはっとする。
『用がないなら切るけど』
 その声はしん、とした車内に筒抜けだった。
「司っちー? 今電話かけてるの俺じゃないから。あまりにもキツイ口調で話すもんだから、リィが怖がって話せないことになってるけどー?」
『翠っ!?』
「あ……はい、翠葉です」
『……今まで何度も言ってきたけど、もう一度だけ言わせてほしい。これ、通信機器だから、話さないと意味を成さないアイテム』
「うん、ごめん……」